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米国特許商標庁における当事者系レビューは違憲なのか?

MCM Portfolioという特許権者がHwelett-Packardと争っている訴訟で、MCM側がIPRを違憲だと主張していることが知財業界で少し話題になっていました。

3. MCM Portfolio LLC 対 Hewlett-Packard 事件 - 2016年2月「CAFC 最新判決ウォッチング」 │ 米国連邦控訴裁判所(CAFC)判決 │ 大塚国際特許事務所

PTAB(Patent Trial and Appeal Board)がいくつかのクレームを特許不可能と判断したことに対して、MCM(MCM Portfolio, LLC)は出訴し、IPR(当事者系レビュー)の手続きが合衆国憲法第3条に違反していると主張した。

 

連邦巡回区控訴裁判所ではMCMの主張は認められなかったのですが、最高裁で再度争われることになったようです。当事者のMCM側がIPWatchdogに寄稿していたので紹介します。

www.ipwatchdog.com

IPR(inter partes review:当事者系レビュー)は、簡単にいうと一度登録された特許を無効にしてもらう手続きで日本の特許無効審判に対応する制度となります。

申し立てを受けて、特許商標庁に設けられたPTABという部門が特許の有効性を審理することになります。だいたい、特許侵害訴訟で訴えられた被告が、特許が無効であるとIPRを申し立てることが多いです。

 

MCMがこのIPRを違憲だと主張していたことは知っていたのですが、詳細は知りませんでした。どうも起稿を読むと陪審による裁判を受ける権利に反しているという主張のようですね。

 

We argue that IPR violates Article III of the Constitution, which vests the judicial power in the federal courts, and also the Seventh Amendment, which guarantees a right to a jury in civil litigation, because it allows a non-court, the Patent Trial and Appeals Board (PTAB), to adjudicate and eliminate valuable property rights without a jury’s involvement.

IPR not only resembles civil litigation, it is designed as an alternative to it.

<私の訳(自信なし)>

私たちは、連邦裁判所に司法権を授与した憲法3条と、民事訴訟における陪審制を保証した7次修正に違反していると主張している。というのもIPRは、裁判所ではないPTAB(※特許商標庁の審判部のこと)に対して、貴重な所有権を、陪審の関与なく裁き無効にする権利を認めているからである。

IPRは民事訴訟に似ているだけでなく、その代替手段として制度設計されている。

 

IPRはこれまでのデータにいうと、特許権者に不利な制度で、申し立てられるとかなりの特許が無効になってしまっています。

MCM (MCM Portfolio, LLC)は、その名前からして訴訟を起こすことで特許侵害者からお金をもらう特許管理会社っぽいです。なのでMCMとしては、HPとの今回の特許侵害訴訟に勝ちたいというだけでなく、今後のためも見据えてIPRという制度自体を亡きものにしたいのかもしれません。

 

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