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TX運行会社の著作権侵害を認定 本紙記事をスキャンして無断で社内ネットワークに掲載 東京地裁判決:東京新聞 TOKYO Web


TX運行会社の著作権侵害を認定 本紙記事をスキャンして無断で社内ネットワークに掲載 東京地裁判決:東京新聞 TOKYO Web

 

東京新聞の記事を500本以上コピーして15年にも渡ってイントラネットで共有していたことから、つくばエクスプレスの会社が訴えられて損害賠償の支払いを命じられた、という話です。

 

つくばエクスプレス側は、著作権が記事には発生していないと主張していた模様です。確かに創作性のない記事、つまりは事実の羅列にとどまるような短い記事は同じことを伝えるためには誰が書いても似たようなものになるので個性の発揮しようがなく法上の著作物と認められません。そうすると著作権も発生しないことになります。流石に500本以上の記事の全部が著作物と認められないことはないと思うのですが、少しでも賠償金を削減しようという訴訟戦略だったのだと思います。

 

詳細は不明ながら感覚的には著作権法の違反が認められる可能性がかなり高そうな事件にも関わらず、なぜつくばエクスプレス側は途中で和解せずに判決にまで至ってしまったのでしょうか。もしかすると損害賠償金の額について新聞社側と折り合えなかったのかもしれません。判決で認められた額について納得していないことを匂わせるコメントを新聞社側が出していました。

 

私も100万円代は安いなぁと感じます。弁護士費用を賄うことも難しそうです。知財訴訟に限らず日本の裁判は損害賠償の額が低いんですよね。悪質な行為に対しては懲罰的な損害賠償金を支払わせる制度が外国にはあるのですが日本にはそのようなものがありません。そうすると裁判のためにかかった費用が持ち出しになってしまう、ということはよくあるんですよね…。

 

なおイントラネットで社内のみに公開していたことに著作権侵害が認められたことを意外に思われた方もいたようです。確かに家庭内のような限られた範囲内における著作物の複製は認められます。ただこの規定は企業内の行為には適用されないので今回のケースでは原則どおり他人の著作物をコピーした時点で著作権侵害になります。

著作権法は実はかなり厳しいので著作権侵害をせずに働ける人はまぁいないと言われます。したがって著作権法はあまり杓子定規に適用される場面は多くなく、著作権者が黙認するような場面も多いです。これは著作物の寛容的な利用などと呼ばれるようです。

 

ただ今回の場合、新聞の記事そのものが新聞社にとって飯の種ですのでその無断コピーを許すという選択はなかったのだと思われます。新聞社は通常、企業内での記事の利用に有償契約を求めています。したがってつくばエクスプレスも、勝手に記事をスキャンして会社内で共有するのではなく有償契約を結んで規定の方法で共有すればよかったわけです。

 

またもしも、有償契約できないのであれば、正当に購入した紙新聞そのものを切り抜いて掲示板に記事を張り出せば、著作物をコピーしたことにはならないので著作権侵害にはなりません。

 

著作権について定評ある本を上げてみました。わたしはいま一番上の茶園先生の本を読んでいます。