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第42回知的財産管理技能士検定1級実技試験ブランド専門業務の解説

知財検定の1級のブランド専門部門については本屋で売られるような過去問解説集がありません。

受験の準備にあたって、公式Webサイトで好評されている第42回知的財産管理技能士検定1級実技試験ブランド専門業務の過去問題集をといたので、解説メモを残したいと思います。

 

Part 1

問1

欧州連合商標制度についての問題です。

(1)ブレクジットによる英国内における欧州連合商標のとリ扱いに関する問題。既存の欧州連合商標と同等の英国商標が付与されました。出願係属中だったものは出願日を維持して英国に出願できました。

(2)&(3)欧州連合商標制度では絶対的拒絶理由(識別力等)は審査されるが相対的拒絶理由(他人の商標との類似など)は異議を受けないと審査されません。ただ出願人の請求によって先行商標の有無を調査してもらうことができます。先行商標が見つかった場合には先行商標の権利者にも通知があります。
欧州連合商標制度は、登録されても後願を自分で排除するために異議申し立てする必要があって気が抜けない感じがしますね。

 

問2

マドプロ出願(商標の国際出願)に関する問題です。

(1)日本の商標登録だけでなく日本の商標出願を基礎にマドプロ出願できます。

第六十八条の二 日本国民又は日本国内に住所若しくは居所(法人にあつては、営業所)を有する外国人であつて標章の国際登録に関するマドリッド協定の千九百八十九年六月二十七日にマドリッドで採択された議定書(以下「議定書」という。)第二条(1)に規定する国際登録(以下「国際登録」という。)を受けようとする者は、特許庁長官に次の各号のいずれかを基礎とした議定書第二条(2)に規定する出願(以下「国際登録出願」という。)をしなければならない。この場合において、経済産業省令で定める要件に該当するときには、二人以上が共同して国際登録出願をすることができる。

 特許庁に係属している自己の商標登録出願又は防護標章登録出願(以下「商標登録出願等」という。)
 自己の商標登録又は防護標章登録(以下「商標登録等」という。)
ただ出願を基礎にする場合には国際登録の日から5年以内に基礎となる出願が拒絶されると国際登録も取り消されてしまいます。
 

 第6条 国際登録の存続期間並びに国際登録の従属性及び独立性


(2) 国際登録は、当該国際登録の日から5年の期間が満了したときは、(3)及び(4)に規定する場合を除くほか、基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録から独立した標章登録を構成するものとする。


(3) 国際登録による標章の保護については、当該国際登録が移転の対象となったかどうかを問わず、その国際登録の日から5年の期間が満了する前に、基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録が取り下げられ、消滅し、放棄され又は、確定的な決定により、拒絶され、抹消され、取り消され若しくは無効とされた場合には、当該国際登録において指定された商品及びサービスの全部又は一部について主張することができない。当該5年の期間の満了前に次の(i)、(ii)又は(iii)の手続が開始され、当該5年の期間の満了後に基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録が確定的な決定により、拒絶され、抹消され、取り消され、無効とされ又は取下げを命ぜられた場合においても、同様とする。 また、当該5年の期間の満了後に基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録が取り下げられ又は放棄された場合であって、当該基礎出願、基礎出願による登録又は基礎登録がその取下げ又は放棄の時に次の(i)、(ii)又は(iii)の手続の対象であり、かつ、当該手続が当該5年の期間の満了前に開始された場合においても、同様とする。
(i) 基礎出願の効果を否認する決定に対する不服の申立て
(ii) 基礎出願の取下げを求める申立て又は基礎出願による登録若しくは基礎登録の抹消、取消し若しくは無効を求める申立て
(iii) 基礎出願に対する異議の申立て

 
(2)マドプロというよりは米国野商標制度の理解度を問う問題です。
米国への商標出願は使用意志によるもの場合には許可通知後に使用証明が必要ですが、外国での登録商標に基づく出願や国際出願の場合には使用証明は登録に不要です。
 
(3)台湾はマドプロ出願できません。中国との関係もあって微妙な地域ですよね。なお、WTOには加盟していますので日本出願を基礎とした優先権主張は可能です。
 

Part 2

問3

(1)&(3)フランチァイザーがフランチャイジーの業務を指定役務として商標を出願することができますがこの場合、フランチャイズ加盟者証などの提出をする必要があります。

(2)実際に使用していない商標であっても、使用意思が有れば出願できます。

 

問4

(1)先願登録商標に係る役務と同一(又は類似)の指定役務を削除することで4条1項11号の拒絶理由が解消されます。

(2)複数の役務を含む出願の場合、削除した役務について分割出願が可能です。

(商標登録出願の分割)
第十条 商標登録出願人は、商標登録出願が審査、審判若しくは再審に係属している場合又は商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合であつて、かつ、当該商標登録出願について第七十六条第二項の規定により納付すべき手数料を納付している場合に限り、二以上の商品又は役務を指定商品又は指定役務とする商標登録出願の一部を一又は二以上の新たな商標登録出願とすることができる。
(3)著名商標を含む商標が、その著名商標と類似するか否か、という話です。次の審査基準が参考になります。
指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。
 

問5

(1)不使用取消審判の要件の問題です。登録商標が3年以上使用されていないことが要件になります。つまり、設定登録の日から三年以上にわたって不使用のとき、あるいは設定登録後に一旦使用し、その後に中断して三年以上不使用のとき審判請求が可能です。この問題ではその要件を満たしていません。

(商標登録の取消しの審判)
第五十条 継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。
(2)&(3)いわゆるアサインバックで4条1項11号の拒絶理由を解消する手法です。出願をYに名義変更すると3条1項柱書の拒絶理由の解消ができなくなるので、そうではなく、引用商標(登録商標)のほうを譲りうける必要があります。