For Sale:baby shoes,never worn.(売ります:ベビー靴、未使用。)というとても短い有名な小説がある。たびたびバズるので見聞きしたした人もいると思う。
明記はされていないが、赤ん坊が死産か何かでもう生存しておらず、用意していた靴が要らなくなったので、売りに出すことにした、という行間を読む小説。ヘミングウェイが紹介したものとして有名だが作者では無いようだ。
小説はこのように、表面上の意味だけでなく暗示している意味を読者に読み取らせようとするものが多い。赤ん坊が死んだ、と直接書いてしまうと、含みがないし、読者が背景をいろいろ想像する余地を奪ってしまう。
ただ現実的な話に落とし込むと、プレゼントされた靴が親の趣味にあわなかったとか、女の子が生まれると思ったからガーリーな靴を用意していたのに男の子が生まれてしまった、とかで売りに出す可能性も相当高い。
私は小説を読むことが若い頃から好きだったので、作者が文章に込めたかった意図を想像して文章を読解してしまう傾向がある。ただこれが小説以外にも通用する正しい読解術とも言い難い。
一般的な文書で、人の生死なんて重大事実を想像で勝手に読み込んで、仮に間違えてしまうとたいへんな問題になりかねない。
また筆者が文書に含めたニュアンスをそのまま読み込むのが正しい態度とも言い難い。利害が筆者と対立する関係であれば、明記されていないものは、こちらの立場に都合がよい解釈をとって、そう主張すべき場面も多い。
弁理士であれば、特許の請求項をどのように読むべきかは、権利者側の代理人であるか、第三者(被疑侵害者)側の代理人であるか、で相当違う。
六語の小説は英語圏で人気があるようだ。