寒い日におしるこ
最近寒い日が続きますね。
こんなときには温かいものが飲みたくなります。つい自販機でおしるこを購入してしまいました。
なかなか美味しかく、また知財的にも面白い商品だったので今日はそれを紹介します。
伊藤園の大納言しるこ
私が飲んだのは、「伊藤園の大納言しるこ」になります。
缶入りで重量は190g。
餡の甘さが濃厚で、小豆のつぶが残っていて食べごたえもあります。
とても美味しかったです。
調べたところ2012年から発売されている伊藤園の定番商品のようです。
そして、この製品「まるごと茹で上げ製法」なる製法で作られていることを売りにしているのです。
まるごと茹で上げ製法とは
一般的に缶入りしるこは、小豆をゆでてから缶に詰めるものです。
しかし伊藤園の独自のまること茹で上げ製法はその順序を逆にして、小豆を缶に詰めてから缶ごと茹で上げるようにしています。
伊藤園のサイトによると小豆の美味しさを逃さず調理できるとのこと。
特許紹介
缶の表示や伊藤園のサイトによると、この「まるごと茹で上げ製法」は特許が取得されています。番号は、特許第4257323号です。
ということで、調べてみました。
特許請求の範囲
「特許請求の範囲」とはなんぞやと言うと、特許になった発明の定義を意味します。
つまりは特許権が主張できる権利範囲となります。
本特許の「特許請求の範囲」は以下の通り。
【請求項1】
生小豆粉砕物、水及び調味料を含有する飲料原料を飲料用容器に収容して封止し、レトルト加熱によって前記飲料用容器内で餡形成することを特徴とする小豆飲料の製造方法。
少し専門的なことを言うと、「特許請求の範囲」は請求項と呼ばれる箇条書きの形で記載されており、本特許は請求項が10個あります。
上記したのは、その中でも一番基本的な(権利範囲が最も広い)請求項1になります。
本特許の請求項1は比較的読みやすくなっています。
一応簡単にまとめると、以下の工程を全てもった製法に特許権が及ぶことになります。
1)生小豆の粉砕物、水、調味料含む原料を用意する
2)(1)を飲料用容器に入れる
3)飲料用容器を封止する
4)飲料用容器をレトルト加熱する
5)(4)の工程によって飴を形成する
明細書
基本的に「特許請求の範囲」は特許発明を定義するのに必要十分な記載にとどめるものです。そのため上の請求項1も非常に簡潔な記載となっています。
その一方で、通常は、発明の詳細な説明をしてほしいとか、具体例を明確にしてほしいとかの要請はあるわけなので、それらは「明細書」という別の書類で記載されることになっています。
例えば、主要なところを抜粋すると、以下の通りです。
本発明では、まず、乾燥生小豆を粉砕した小豆粉砕物の水性分散液を用意する。レトルト加熱において良好な餡が形成される好適な水性分散液は、分散する小豆粉砕物の粒径によって形成される餡の滑らかさや食感が異なり、滑らかな餡を形成するには、小豆粉砕物の粒径が約3mm未満、好ましくは5~300μ程度の微小なものを用い、約3mm以上の粗い粒を使用すると、飲料の食感に厚みが付与される。
小豆粉砕物等の配合割合を調整した飲料原料は、飲料用の容器に充填して封止し、レトルト加熱により殺菌処理する。小豆粉砕物、調味料・添加剤及び水の配合及び飲料原料の調整を容器内で行ってもよい。容器は、缶、レトルト食品用パッケージ等の封止加熱が可能な耐熱・耐圧性のものであれば特に限定することなく使用できる。レトルト加熱によって、内容物は加圧状態で加熱され、常圧での加熱の場合より煮込み・餡形成等の調理が容易になる。
小豆を粉砕する大きさの具体例とか、レトルト加熱を採用することによる効果など発明が明細書において詳細に説明されていることがわかります。
特許発明も家庭なら実施できる
ちなみに、特許が伊藤園で取られていたとしても特許権が及ぶのは産業上の実施のみです。つまり家庭内のみで伊藤園の特許を使う分には問題ありません。
もし家に缶入り食品をレトルト加熱する設備を持っている方がいれば(いるかな?)試しにお汁粉を作ってみるのもよいでしょう。
また本特許は外国には出願されていませんでした。そのため中国やアメリカのように、日本以外の国であればこの特許を使っておしるこビジネスを始めても問題はありません。
今日のところはこのへんで。