雑記ときどき知財の弁理士ブログ

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知財活用、経営者が連携 旭化成やキヤノンが推進組織: 日本経済新聞


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知財活用、経営者が連携 旭化成やキヤノンが推進組織: 日本経済新聞

 

経営者が知財活用を図る組織を作ったとの話。知財関係者ではなく経営層が参加する組織なのが珍しいとのことです。内閣府特許庁のような行政や大学、金融機関も組織に入っているので結構すごいのかもしれません。

 

日本ではビジネス向け知財の代表である特許の出願件数は右肩下がりです。その一方で、特許などの知財を経営に活用しよう、という動きは近年どんどん高まっている印象を受けます。

 

邪推するに、日本の技術力や経済力が衰微する中では力押しのビジネスがもはやうまく機能しないという現実があるので、もっと持てる財産を有効活用しよう、賢く使おう、という流れが背景にあるのかもしれません。

 

なんとなくの感覚ですが、ビジネスにおける知財って、ビジネスの旗色悪くなったときにむしろ注目を浴びるんですよね。

 

いずれにせよこの流れの中では、弁理士知財担当者も経営戦略的なアドバイスできることが望ましいのでしょう。実際に知財コンサルなんて業務を売りにする方々もいます。

 

ただ、知財をビジネスにどう活かすのか、というのは一般的な知財業界人が持つものとはかなり毛色の違った能力が必要そうです。それができる知財担当者ってそんなにいるのかなぁという感じはします。

 

ただ権利は取るし、裁判もするから、それをどう活用するかは勝手に経営層が考えてくれ、というスタンスだけでは、知財業界の存在感は下がりそうですよね。知財を産業発達に活かす、という法目的を達成する上でも、もっとビジネスに寄り添う姿勢が必要なんだろうな、と思っています。

 

 

 

リチウムイオン二次電池関連技術の特許総合力ランキングで日本・米国・欧州全てにおいて1位を獲得 | ニュース | 東芝


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リチウムイオン二次電池関連技術の特許総合力ランキングで日本・米国・欧州全てにおいて1位を獲得 | ニュース | 東芝

 

パテント・リザルト社の調査によると、「リチウムイオン二次電池 酸化物系負極 関連技術」について、日米欧の3拠点の特許の総合力において東芝が首位だったとのお話。

 

EVのような乗り物に使われている電池のようです。これから電動化の傾向がますます強まる中で日本企業に強みがあるのは嬉しいですね。

 

ニオブチタン酸化物(NTO)負極 | 東芝の二次電池 SCiB™ | 東芝

おそらく技術の説明しているサイトはこれでしょうか。容量が大きく、長寿命で高速充電も可能とのこと。

 

太陽光発電とか風力発電とかの自然エネルギーを活用して電力を供給しようとする流れもあります。発電量が安定しない自然エネルギーを活用する上では、余剰の電力を蓄えることのできるバッテリーの開発が望まれると思います。その面でもリチウムイオン電池の技術向上が図られると嬉しいなぁと思っています。

 

 

 

現役裁判官に聞く 新たな裁判所「ビジネス・コート」の狙いとは?|テレ東BIZ(テレビ東京ビジネスオンデマンド)


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現役裁判官に聞く 新たな裁判所「ビジネス・コート」の狙いとは?|テレ東BIZ(テレビ東京ビジネスオンデマンド)

 

先日もブログを書いたビジネスコート(ビジネス裁判所)の話。

単に引っ越しする程度かと思っていましたが、裁判手続きのデジタル化を図っているんですね。上記のサイトでは裁判官が、ビジネスコートによって、日本への投資を促し、かつ、国際紛争における日本司法のプレゼンス向上を図る旨、語られていました。

確かに利便性の良い裁判が受けられるならば、日本に対する企業の投資も増えるし、日本を紛争解決地に選ぶことも増えるでしょう。結構、裁判官は熱く語っていたので結構真剣な話なのかもしれません。

補足的な事項ですが、上記のサイトの中で裁判所とのシナジーを期待する外部の専門家として弁理士の名前を出してくれていたのが嬉しかったです。

 

 

 

<W解説>石川県の高級ブドウ「ルビーロマン」は韓国で商標登録できるか?


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<W解説>石川県の高級ブドウ「ルビーロマン」は韓国で商標登録できるか?│韓国社会・文化│wowKorea(ワウコリア)

石川県が開発した高級ぶどうのルビーロマンが韓国に流出していて第三者に商標登録までされてしまった、という話。


今になっていろいろ対応しているみたいですが、元をたどれば最初から自前で韓国に品種登録出願や商標登録出願をしていればもっとマシな状況だったはずです。

 

この手の知財はビジネスの問題のため原則自己責任で保護を求める手続きしていないと第三者による参入を黙認したことになりかねません。流出の過程に悪どい行為があったかもしれませんが…。

 

権利を守るための出願していなかったのは、やはりお金の問題でしょうか?外国にまで出願するだけの費用が県になかったとか。

それとも知識や意識、あるいは制度の問題でしょうか?最近になるまでここの分野はあまり注目されていなかった気もするので当時は対策が手薄になったかもしれませんね。

 

商標出願なら弁理士に依頼すれば隣国で商標登録するくらいなんとかしてくれます。ただ海外での品種登録出願を請け負ってくれる商売っていうのはあるのでしょうか?

 

特許事務所で種苗法に基づく品種登録出願に特化しているところはなさそうです。韓国の手続きは誰に頼めば良いのでしょう?もしサポートが手薄な領域ならば農業に強い弁理士が参入して役立てそうではあります。

 

(追記)

河内晩柑はMISHOで欧州商標登録|NHK 愛媛のニュース

 

「河内晩柑はMISHOで欧州商標登録|NHK 愛媛のニュース」

農産物の商標に関しては、海外でも商標登録した事例があるようです。

 

最近、種苗法が改正されたことが話題になっていたので、その時からいずれきちんと学習したいなぁとは思っています。

ビジネス訴訟などの専門裁判所「ビジネス・コート」全国初開設 | NHK

ビジネス訴訟などの専門裁判所「ビジネス・コート」全国初開設 | NHK

ビジネス関係の訴訟に特化したビジネスコートが中目黒にできて、知財高裁もそちらに移転するというお話。高裁だけでなく地裁の知財部も移転するし、他にも地裁の商事部と倒産部が移転するとのことです。

移転によって裁判所に通いにくくなったとこぼす知財系弁護士先生もいましたが、多くの知財業界人にとってはそんなに影響はないかもしれません。というのもリンク先の記事にもあるように知財関連の訴訟は年間500件程度。知財の専門家である弁理士が一万人くらいいて、日本特許庁に対する年間の特許出願が30万件弱あることを考えると訴訟件数なんてごくごく僅かなんですよね。

私も知財業界に10年以上いますが日本の裁判所に行ったことが一度もないです。

知財業界の一番の多数派はたぶん特許庁に対して手続きをして特許権のような権利を獲得する業務、いわゆる権利化業務(プロセキューション)に関わっています。それに比べると、特許訴訟のように裁判所において権利を行使する業務(リティゲーション)に関わる人はずっと少ないです。

米国や中国だと知財に関わる訴訟は日本に比べてずっと多いので、日本の訴訟の少なさは特異的と思います。個人的にはちょっと残念ですね。使われることのない権利をただただ手元に溜めている感じがするので。

しかしながら訴訟で知財権の行使がなされないとしても権利の獲得が無駄と言うわけではありません。知財権を持っていると紛争を抑止する効果があります。

例えばライバル企業から特許訴訟を仕掛けられた場合、その対抗策としては自社の特許を使って相手方を訴え返す、つまりカウンター訴訟を仕掛けるというものがあります。

カウンターを食らう恐れがあるならば相手も自社を訴えることを躊躇するはずです。撃たれたら打ち返せる状況を作り出すことで戦争になることを防ぐ考え方に似ていますね。

ライバル企業が自社に対して有効な特許を持っている場合には、自社もライバル企業に対して有効な権利を持って膠着状態に持ち込まなければなりません。

互いに相手に対して攻め玉となる権利があれば、互いに訴訟を避ける動機付けが生じるので、話し合いで解決することが多くなります。具体的にはお互いの特許のライセンスを相手方に対して許諾するクロスライセンス契約が結ばれることが多いです。互いの特許の数や質、特許を使った事業の規模などを考慮してライセンス料をどちらがどれだけ負担するか、が決まります。

紛争を防ぐために権利を持つ、という考え方は一般的で上記の本などに解説があります。

 

 

 

 

 

「知財訴訟」仕掛ける中国 ソニー・日立金属 狙われる日本

「知財訴訟」仕掛ける中国 ソニー・日立金属 狙われる日本【日経プラス9】(2022年10月6日) - YouTube

中国の特許出願は、日本や米国よりもずっと多く大半が中国からのもの。玉石混交とはいえ権利の網が張り巡らされているため日本企業も相当注意しないと訴えられる側になってしまうという話。

 

懲罰的な損害賠償制度が新法で設けられて最大で損害額の5倍の賠償が求められることになる。これはアメリカの3倍よりも大きい。私も日本の知財人としてこの新法が物議醸しているのは見ていました。

 

あと話にあった日立金属が中国で訴えられた話というのは気になりますね。特許ライセンス出さなかったら逆に訴えられた、という話でしたが詳細な話なかったので。

 

軽く調べたところ、事実上の必須特許なのでライセンス出さないのは独占禁止法違反というロジックなんですね。

最近、中国は独占禁止法を絡めて、特許ライセンスの許諾をすすめようとする政策があるのかも。なんかいろいろな指針が出されているの見たことありますので。

 

法務の疑問に答える中国独禁法Q&A

法務の疑問に答える中国独禁法Q&A

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中国OPPO、海外停滞 スマホ販売でドイツ事実上撤退: 日本経済新聞


中国OPPO、海外停滞 スマホ販売でドイツ事実上撤退: 日本経済新聞

 

ノキアの特許を侵害したとしてスマートフォンの販売を差止められた結果、ドイツからOPPOが撤退したという話。

 

以下の記事によると5G絡みの特許でライセンス契約をしようにもドイツだけでなく全世界分の端末についての支払を求められたのでドイツで端末を売り続けるのが厳しかった模様。

https://smhn.info/202208-oppo-germany

https://smhn.info/202208-oppo-germany

 

こういう話を聞くと特許の怖さを感じますね。独占的排他権で他社の事業をその国から排除できるという強力な力。

ちなみにドイツは特許訴訟が行われることが多いらしい。侵害論と損害論が二段階で行われて損害論が終わり次第、差止めできるとか、無効論は別訴訟になるとかで、特許権利者側有利なのかな??

 

日本は損害賠償の額は低いけど差止め請求なら認められやすいと思うので日本も訴訟増えないですかね〜