知財の紹介をします。今回は知財権のひとつである商標法の裁判例である、国際自由学園事件について取り上げたいと思います。
裁判では、国際自由学園という登録商標が問題とされました。これは、知識等の教授などを指定役務とする商標です。つまり国際自由学園は、その名の通り、学校の商標になります。
そして、登録商標「国際自由学園」は、商標権者とは関係のない他人の「学校法人自由学園」の略称を含んでいることが問題となっています。少しわかりにくいのですが、他人の正式名称である「学校法人自由学園」から「学校法人」を除いた「自由学園」の部分が、商標法上、略称と見なされる、ということです。
裁判の論点は、「自由学園」は、他人である「学校法人自由学園」の略称として著名性を有しているか、どうか、ということです。
この略称が著名性を有していれば、4条1項8号の規定により、商標登録は無効にされます。
他人の著名な略称を含む商標を勝手に登録されないようにすることで、他人の人格的利益を保護するための規定です。
裁判で、商標権者は、「自由学園」は、学校の需要者である学生やその父母にとってはよく知られていないので、「学校法人自由学園」の略称として著明とはいえないと主張しました。
これに対して、裁判所は、「自由学園」は書籍や新聞等で取り上げられているので、特に知識人には「学校法人自由学園」の略称として知られている。そのため一般にも略称が受けいれられていて著名と見なす余地がある、と認定しました。
つまり、「自由学園」の著名性の認定にあたり、需要者の間ではよく知られていない略称であることを裁判所は問題にしませんでした。
この裁判例に対する私の所見は次の通りです。
「著名」や、「一般に受け入れられている」という概念は、学校の需要者である学生等も含めて、誰でも知っている、という水準が求められるのかと思いきや、そうではなさそうです。
つまり、書籍、新聞、知識人など、比較的、情報感度や知的水準の高い関係者の間で認識されていれば、一般的に受けいれられている略称として、著名性が認められうるようです。
これは、4条1項8号は、第三者の人格的な利益を守る規定だからではないでしょうか。
つまり、需要者による誤認混同を問題とするような規定ではありません。したがって、需要者を著名性を判断する基準とするのは適当でないのだと思います。
需要者に知られていなくても、略称が特定の層の間で認識されていれば、その他人の人格権を保護すべきとされたのではないか、と思います。
なお判決文全文はこちらです。
062612_hanrei.pdf (courts.go.jp)
国際自由学園事件もこの書籍に掲載されています。私はこの書籍で判例の学習を進めています。
私は所有していないのですが、商標法の判例集として一番有名なのはこちらかと思います。