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令和三年度・弁理士実務修習の概要とその感想。事前課題とその再提出に苦しめられました


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弁理士試験に合格しても、すぐに弁理士試験に登録できるわけではなく、弁理士実務修習という弁理士の実務についての学習会に参加しないといけません。

この弁理士実務修習は、受講生の人数がそこまで多くないこともあって(※)か、受講生の体験談がそこまで多く出回っていないので、簡単に私の体験談をまとめてみました。

 

(※)令和三年度の実務修習の受講生は200人台だったと思います

 

なお私は令和3年度(2021年度)の弁理士試験に最終合格してその年度の実務修習を受講しています。コロナ対応で例年よりも2ヶ月スケジュールが遅れていたので、実務修習が始まったのは令和4年の2月で、終わるのは令和4年の5月になりました。

以下の体験談は、例年とは少しスケジュールが異なることを留意して読んでください。

 

実務修習は、受講生が特定日に集まって行われる集合研修と、各自が自分のペースで行うeラーニングからなります。以下、詳しく説明していきます。

 

www.jpaa.or.jp

申し込みについて

まず要注意ポイントとして、弁理士試験の合格発表から、弁理士実務修習の申し込みまで僅かな時間しかないということです。実務修習は1年に1度しかないので、その年の申し込みに間に合わないと、弁理士登録が少なくとも1年遅れてしまいます。

私が受講した年度の場合、2022年の1月13日が合格発表で、実務修習の申し込みは1月14日(金)~1月26日(水)でした(当日消印有効)。

申し込むに当たっては、11万8千円という比較的大きなお金が必要なので、申し込む予定がある人は合格前から用立てておくと安心です。また、実務修習は複数のコースに分かれていて、選択するコース次第では、集合研修の日程や一部の講義の内容が変わります。

特に集合研修の日程が仕事や家庭の用事とかぶらないように、前もってどのコースを選ぶか考えて予定を調整しておく必要もあります。病気などやむを得ない場合をのぞき、集合研修に欠席すると実務修習を終了できなくなります。

 

集合研修のコースは、日程に関して、土曜コース、金曜コース、集中コース、平日夜間コースに分かれます。平日夜間コースは仕事終わりに間に合うように、18時から開始です。一日あたりの講義時間が短い分、集合研修が全9日あります。

一方、他のコースは原則、午前午後の両方使って研修があります(10時~17時10分)。その分、全5日です。

土曜コース、金曜コースは、その名の通り、毎週、土曜か金曜に集合研修あるコースです。一方、集中コースは、特定の1週間の平日5日を使って一気に集合研修を終わらせるものです。

なお、土曜コースのみ、開催地が、東京、大阪、名古屋から選べます。他の日程は東京だけです。ただ、私が受けた年度は、昨年に引き続いて、コロナ対応のため集合研修はすべてオンラインで開催されました。従って、実際には東京コースだろうと、大阪コースだろうと、自宅で受講が完結します。どうやら海外から受講された方もいるようなので、開催地は基本的には意味がありませんでした。ただ、各コースとも開催地の近郊で働かれている弁理士の方が講師を務めますし、基本、受講生は自分の勤務地に近い開催地を選ぶ傾向があるとは思います。

 

集合研修は、特実・意匠・商標の講義があるのですが、特実は技術分野で機械、電気、化学にわかれます。

したがって、実務収集は、その申込時に、日程、開催地(土曜コースの場合のみ)、技術分野を第1~第3希望まで選んで申し込む必要があります。

必ずしも、第1希望通りになるとは限らないので、よく考えて希望を出すのが望ましいです。ただ、前述したように、今年度は、オンライン開催だったので、開催地についてはそこまで気にする必要はありませんでした。

例えば私の場合には、東京土曜機械コース、名古屋土曜機械コース、大阪土曜機会コース、の順で希望を出し、第2希望の名古屋土曜機械コースに参加することになりました。

 

なお一定の実務経験がある方は、一部の研修を免除してもらうことが可能です。職歴証明書を作成して、所属組織の上司などにサインしてもらう必要があるので、免除利用を予定する方はその準備も必要です。

免除してもらっても費用は割り引かれません。さらに言うと実務経験があったとしても、他の受講生と集まれる集合研修に参加するなどはよい経験になるとも思います。よって私は免除申請はしませんでした。ただ研修を全部受講すると、結構な負荷になるので、免除可能な方が実際に免除申請をするか否かは個々人の判断が分かれると思います。

 

弁理士に登録する予定のない合格者でも実務修習は受講する人が多いようです。また弁理士試験合格者ではない弁護士も実務修習を受講することができるので、実務修習の受講生の数は、今年度の弁理士試験の合格者数よりも多かったようです。

 

事前課題について

実務修習が開始されると、受講票や教材が段ボールで送られてきます。集合研修やeラーニング用のテキストの他、集合研修に参加されるための事前課題(合計7つ)も入っています。この事前課題を期日までに送らないと、集合研修に参加できず、実務修習を終了することができなくなるので確実に提出することが必要です(免除者以外)。

 

要注意点として、教材が送られてきてから最初の課題提出日までの期間がごく短いことです。今年度の場合、おそらく実務修習開始日の2月15日ごろに教材が事務局から発送されたと思うのですが、最初の課題の締め切り日が2月25日でした(当日消印有効:発信主義)。課題を受け取ってから提出日まで10日もないです。

特に実務経験がない方だと、関連するeラーニングを受講したり、特許庁のサイト等で調べながら、課題を起案する必要があって時間がかかります。なかなかタイトです。

なお初回の事前課題を提出したあと、2つ目の課題提出日がその4日後と更にタイトです。その後も、おおよそ1週間ごとに1つ又は2つの事前課題の提出に迫られます。

課題提出期限の曜日は週によって微妙に異なるので、この期日もしっかり注意しておくことが肝心です。間違えると実務修習を終わらせることができなくなります。

 

なお、原則、課題の提出は、起案した書類を紙に印刷して、教材とともに送られてくるレターパックライトでポスト投函(or郵便局にも持ち込み)することになります。また、課題の提出にあたって、教材とともに送られてくる表紙を添付する必要があります。

従って、海外から集合研修を受講する場合、事前課題提出には日本在住者(実家の両親とか)に協力してもらうことが必要です。海外で作成した起案データを日本在住者に送って、表紙添付のうえ、レターパックライトで投函してもらう、という流れになるかと思います。

 

日本在住者宛に届いた教材一式を海外に転送してもらう際には、中身を確認してもらい、表紙とレターパックライトは、日本在住者の手元に残してもらうとよいと思います。

 

なおレターパックは、事前課題の数だけ入っているのですが、可能な場合には複数の課題を一度に送って、レターパックライトを温存することも可能です。後述しますが、事前課題が不合格になってしまうと、再提出することになります。その際にレターパックライトが残っていれば、再提出用に使い回すことができます。

 

事前課題の再提出(再々提出)について

私が受講した土曜コースの場合、事前課題の最後の提出期限の少し前から、集合研修が毎週土曜日に開催されました。集合研修の当日、講義の直前又は直後に、事前に提出した課題の合否が判明します。集合研修では事前課題の合否のポイントを講師の先生が解説してくれるので、事前課題が不合格だった場合に備えて、集合研修はよく聞いておくと良いです。

なお、課題が不合格になった場合の、再提出期限は、集合研修日の4日後~6日後で、不合格の場合、起案を修正する時間的な余裕はあまりないです。

集合研修の数日後に復習録画が配信されるのですが、再提出期限の直前に配信となることもあるので、録画配信を過度に期待せず、当日集中して先生の解説を聞くことをおすすめします。

講師の先生の解説を受けてきちんと修正すれば、再提出が合格になる確率は高いと思います。

なお、課題が再提出になった場合には、再提出用の表紙がわざわざレターパックライトで送られてきます。レターパックライトは通常、郵便受けに投函されるのですが、サイズ的に郵便受けに入りきらないと、代わりに不在連絡票が投函されて、レターパックライトを後日、郵便局員から直接受け取る必要に迫られます。前述のように、再提出期限までは余裕ないので、確実に再提出用の表紙を受け取れるよう注意が必要です。

また各再提出の締切の曜日は一定ではないので、きちんと確認して遅れないようにしましょう。

 

実務経験者の方が、課題の合格率が高いかといえばそうでもなく、未経験者でもかなり高い合格率を達成している方もいました。実務未経験だからこそ、しっかりと準備して、合格基準を超えているのかもしれません。

私は実務経験ある課目を含めて再提出が多く、かなり苦しめられることになってしまいました…。

 

なお再提出も不合格になると再々提出になります。再々提出でさらに不合格になると、その課題に関する集合研修の単位がもらえず、実務修習を修了できません。ただ再々提出者には、修正すべき点について講師の方から個別にコメントがあるらしく、再々提出が不合格にならないよう配慮はしてくれるようです。

 

集合研修の当日の様子について

集合研修は、事前課題の解説だけでなく、受講生同士が小グループに分かれてグループワークをするので、結構楽しいです。人見知りであることを理由に事前に気後れしている人が私を含めて多かったですが、終わると想像以上に楽しかった、という話がよく聞かれました。

 

集合研修は、事前課題の合格と、当日の出席の両方を達成することで単位がもらえます。原則、集合研修の欠席や途中の離席は単位がもらえなくなるので要注意です。

遅刻の他、通信回線の途絶の対策も考えたいところです。私は、集合研修の途中で通信が途切れて、少し焦りました。すぐに復旧できて、その旨、事務局に報告できたので問題なかったのですが、離席時間が15分を超えると補講受講など別途の対応が必要になったり、最悪、単位がもらえなくなったりするようです。

自宅の通信回線が貧弱な場合には、設備の整った施設(時間貸し会議室など?)で受講することも考えられます。ただ集合研修は、機密が保持できる環境での受講が求められていることには注意が必要です。

集合研修はWeb会議システムである、zoomを利用して行われ、顔出しが必要とされます。私が受講したコースでは、背景をぼかす機能を使っている人が結構いたのですが、他のコースでは、ぼかし機能の利用をしないよう指導を受けた人もいたようなので、ぼかし機能を使って良いのかどうか、ちょっと微妙なところです。片付いた部屋で受講するのが安心かもしれません。求められれば受講票を提示する必要もあるのですが、求められたことはありませんでした。

 

例年は、集合研修が人脈形成の場になっているようなのですが、オンライン開催なのでその点では不利かと思います。個別に連絡先を交換するような時間もありません。ただ、今年はツイッターからライングループの作成を提案してくださった方がいたので、ライン内での交流が比較的活発でした。同期コミュニティを作りたい人はSNSの積極的利用を考えると良いかと思います。

 

eラーニングについて

受講生が、各自のペースで受講することになるeラーニングは、25課目あって、全部で50時間程度必要になるそうです。すべて動画の講義で80日間で受講を完了する必要があります。

最初の受講時は倍速再生することができません。また、ところどころで択一式の確認テストが挟まれるので、結構な時間をとられます。仕事終わりに、少しずつ受講するようなペースだと、あまり時間的な余裕はないように感じました。

なお、復習受講時には倍速再生が可能になります。実務に即した講義になるので、復習に力を入れるのも良いと思います。

 

期間内に集合研修とeラーニングのすべての単位を取ると実務修習の完了が可能な状態になり、修了証が送られてくるそうです。

 

 

実務修習を受けて、これまで携わったことのない商標実務に興味を持ちました。実務修習の複数が終わったら、別途、上記の書籍等で勉強してみようかと思っています。なお、最後の商標実務入門は、すでに読んだことがあり、なかなか良い本でした。

 

実務修習とは何の関係もないですが、弁理士が活躍する小説で、実務修習前に楽しく読みました。作者の南原先生は、弁理士合格者向けのオンライン合格祝賀会で講演してくださったので私も聴講しました。